リピーターとナイヤビンギドラム

ケテドラムとは

=ROOTS REGAE(ルーツレゲエ)やNyahbinghi(ナイヤビンギ)で聞く事の出来る,味のある土臭い音が特徴のジャマイカ独自の太鼓です=

ケテドラムはジャマイカのマルーンコミュニティーで起こったラスタファリという思想、宗教において、彼等の故郷である西アフリカのアシャンティ族などの太鼓を模して作った太鼓です。簡単に言うとアフリカの太鼓がジャマイカで形を変えて叩かれたと言う所でしょうか。

ジャマイカの黒人は1500年代からの奴隷貿易の時代、当時ジャマイカを植民地としていたヨーロッパ人(イギリス、スペイン)によって植民地の労働力にすべく、アフリカから無理やり連れて来られました。アフリカでは古くから太鼓は宗教儀式(喜びや、悲しみを表現し共有する手段)に用いる物として、また通信手段などとして、生活に密着していました。

奴隷として連れて来られた人々の心には、当然だけど故郷への想いや習慣が消える事なくより強く残りますよね。とくに辛すぎるプランテーションでの強制労働に疲れ果て故郷アフリカに思いを馳せ、故郷の歌を歌って、心の解放を求め苦しみをやわらげようとする時、太鼓はなくてはならないものでした。強引に無慈悲に引っ張って来られたのだから、故郷の太鼓なんて持ってくる余裕はない。そこで身の回りにあるわずかな材料から粗末な太鼓をこしらえて叩た、辛い、苦しい、悲しい、想いを全て込めて、自由、解放を求め叩いた。その太鼓がケテドラムです。だからオンボロなんです。だから味のある土臭い音なんです。太鼓としての質は、けして良質とは言いがたい。でも、そここそがケテドラムの魅力だと思います!それはジャマイカおよおびカリブ各国、アフリカ本土、ラテンアメリカ各国に、ヨーロッパでの大航海時代から始まった帝国主義および産業資本主義がまき散らした(まき散らしている)酷く悲しい爪跡、アフリカに対する白人達の身勝手なスタンス、そのジャマイカにおける結果、歴史を物語る、重要な太鼓が『KETTE DRUM』であると言えるからです。

その音は味わい深く、儚く、切ない。しかし踊る事、歌う事、叩く事、音楽全てに抜きん出ている、アフリカのバイブス。そして白人にずたずたにされながらも苦難をたくましくサバイブするアフリカ民族の強いスピリットも内包した、強烈に心に響くサウンドです。

またレゲエミュージックが庶民の音楽であり、反骨の音楽である事から、レゲエミュージシャンにはラスタマンが多く、レゲエとラスタは切っても切れぬ関係です。したがってレゲエミュージックにおいてケテドラムがなくてはならないパーカッションでもあり、ケテドラムが鳴る素晴らしい音源や名うてのケテ奏者も数多く存在します!

PS. ケテドラムの綴りに関しては、『KETTE DRUM』と書いたり、単に『KETE DRUM』と書いたり、『A KETTE』などと色々のようです。呼び方も、ケテドラム以外にリピータと総称したり、ビンギドラム、ナイヤビンギドラムなどとも呼ばれます。

ジャマイカでの黒人奴隷

ケテドラムの種類

いちばん小さなリピータ

ココナッツの木をくり貫いたり、ラム酒樽の板なんかを張り合わせて加工したものが見られます。

高音部を担当し、即興的なフレーズを奏でます。大地に暮らす様々な生き物の動きやおしゃべりを表します。

レゲエのパーカッションとしてもおなじみで、“ケテといえばリピータ”というイメージです。

中音のフンデ

こちらはコンガなどで代用されることも多い。大きさはリピータの2倍ほど。

ナイヤビンギにおいて叩かれる、ハートビートの屋台骨となる、”ドッド。ドッド。”のハートビートリディムを支えます。

引いては寄せる、波や風のシンコベーションです。

いちばん大きなベースドラム

材料には、酒樽をまっぷたつに切ったものをそのままボデーに使用しているものが多いです。

これもジャマイカならでは?(笑)

ベースドラムでは一番大きなリディムを低音で、”ドーン。ド。”と叩きます。 大地の鼓動を現します。